Mercedes-Benz OM602

メルセデス・ベンツ OM602ディーゼルエンジン:仕様・型式・故障原因を解説

メルセデス・ベンツOM602は、乗用車、Gクラス、商用車に搭載された直列5気筒ディーゼルエンジンの系列です。排気量2.5Lと2.9L、自然吸気仕様とターボ仕様があり、燃料噴射方式も大きく2種類に分かれます。正確な諸元や整備手順を特定するには、OM602という系列名だけでなく602.xxxまで含むエンジン型式が必要です。

初期のOM602は予燃焼室式の間接噴射と列型燃料噴射ポンプを採用しています。一部のターボ仕様には電子制御が追加されますが、基本的な噴射方式は同じです。後期2.9LのDE29LAは直接噴射と電子制御式Bosch分配型噴射ポンプを採用しており、コモンレール式ではありません。

Mercedesの整備資料には、特定のW124生産車におけるタイミングチェーンの伸び、ピストン式バキュームポンプ駆動部の損傷、シリンダーヘッド周辺のオイル漏れ、オイルフィルターハウジングのシールに関連した異音などが記載されています。燃料漏れや始動不良も所有者・整備関係者から報告されていますが、原因は各仕様ごとに確認する必要があります。

エンジン概要

Mercedes-Benz OM602

排気量2,497/2,874cc
エンジン形式直列5気筒ディーゼル
シリンダーブロック鋳鉄
吸気方式自然吸気/ターボ
燃料噴射方式間接噴射/直接噴射
動弁系SOHC・10バルブ

OM602の諸元とエンジン型式

OM602 2.5Lはボア87.0mm、ストローク84.0mmで排気量2,497ccです。2.9L仕様は89.0×92.4mmで2,874ccとなります。いずれも直列5気筒・各気筒2バルブ、アルミ合金製ヘッド、チェーン駆動の上置きカムシャフトを備えます。ただし燃焼方式や部品の互換性まで同じとは限りません。

項目 OM602 2.5 OM602 2.9
排気量 2,497cc 2,874cc
ボア×ストローク 87.0 × 84.0 mm 89.0 × 92.4 mm
気筒配置 直列5気筒 直列5気筒
ブロック/ヘッド 鋳鉄/アルミ合金 鋳鉄/アルミ合金
バルブ構成 SOHC・10バルブ SOHC・10バルブ
カムシャフト駆動 資料確認済み仕様では2列ローラーチェーン 資料確認済み仕様では2列ローラーチェーン
噴射方式 予燃焼室・列型ポンプ D29は予燃焼室・列型ポンプ、DE29LAは直接噴射・分配型ポンプ
過給方式 自然吸気またはターボ D29は自然吸気、DE29LAはターボ

仕様別のメーカー公称出力

出力、トルク、圧縮比は、エンジン型式と搭載車・市場を指定して示す必要があります。別市場の値をまとめて、系列全体の出力範囲を作ることはできません。

エンジン型式 確認された仕様 出力 トルク 圧縮比
602.911 初期欧州仕様W201 190 D 2.5 66 kW / 90 PS 154 Nm 資料確認済み仕様で22.0:1
602.911 MBNA資料の米国仕様190 D 2.5 69 kW 165 Nm 22.0:1
602.912 初期欧州仕様W124 250 D 66 kW / 90 PS 154 Nm 正確な搭載仕様を確認
602.961 欧州仕様W201 190 D 2.5 Turbo 90 kW / 122 PS 225 Nm 22.0:1
602.961 米国連邦仕様190 D 2.5 Turbo 92 kW 228 Nm 22.0:1
602.962 米国連邦仕様W124 300 D 2.5 Turbo 90 kW 223 Nm 正確な諸元を確認
602.942 290 GD(W461) 70 kW / 95 PS 192 Nm 22.0:1
602.980 Boschカタログ掲載Sprinter 310 D 75 kW 引用した記録には記載なし 引用した記録には記載なし
602.980 Boschカタログ掲載Sprinter 312 D 90 kW 引用した記録には記載なし 引用した記録には記載なし
602.982 E 290 Turbodiesel(W210) 95 kW / 129 PS 300 Nm 19.5:1
602.983 G 290 TD(W461) 88kW/120PS(Mercedes) 技術カタログで280Nm ここでは未確認

欧州向け602.961の公称値は4,600rpmで90kW、2,400rpmで225Nmです。602.982は4,000rpmで95kW、1,800~2,400rpmで300Nmです。後者は同じOM602系列でも予燃焼室式ではなく直接噴射式です。

Boschのディーゼルカタログには、602.980が75kWのSprinter 310 D(掲載期間1997年1月~2000年3月)と90kWのSprinter 312 D(1995年2月~2000年3月)に記載されています。噴射ポンプもエンジン番号の境界や仕様コードで区別されます。これらはカタログ上の適用期間であり、エンジンの全製造期間ではありません。

出力値の資料間差異:Mercedes-BenzはG 290 TDを88 kW/120 PSとしていますが、関連するBoschカタログの適用記録には90 kWと記載されています。いずれか一方を無条件の共通値とせず、資料と仕様の違いを明示します。

OM602搭載メルセデス車一覧

OM602系列はW201、W124、後期のW210、Gクラス、商用車に搭載されました。車名だけで判断することはできません。同じ2.9LのOM602でも、型式末尾によって予燃焼室式と直接噴射式に分かれます。

車種 車台/タイプ エンジン 確認された適用範囲
190 D 2.5 W201 / 201.126 602.911 欧州/北米で出力・年式が異なる
190 D 2.5 Turbo W201 / 201.128 602.961 欧州アーカイブでは1986年2月~1988年8月、他市場仕様あり
250 D W124 / 124.125 602.912 欧州仕様は1985年から
300 D 2.5 Turbo W124 / 124.128 602.962 米国向け1990~1993年モデル
290 GD W461 / 461.337 602.942 短ホイールベース、1992~1997年
Sprinter 310 D W901~905系列、個別型式は異なる 602.980 Bosch記載の75kW直接噴射仕様
Sprinter 312 D W901~905系列、個別型式は異なる 602.980 Bosch記載の90kW直接噴射仕様
E 290 Turbodiesel W210 / 210.017 602.982 Mercedes資料:主な生産期間1996年3月~1999年6月
E 290 Turbodiesel T-Modell S210 602.982 ステーションワゴンの搭載例
G 290 TD W461 602.983 1997年9月発表の直接噴射ターボ

602.940、602.946などの2.9L仕様はT1、Sprinter、Vario、Gクラスにも存在します。ただし個別のエンジン番号、市場、車体形式を確認する必要があり、系列の一般的な搭載一覧から全年式への適用を推定してはいけません。

機械構造と燃料噴射方式の違い

エンジン下部とピストン

OM602のシリンダーブロックは鋳鉄製、ヘッドはアルミ合金製です。Mercedesの602.91/96整備書にはクランクシャフトの6か所の主軸受位置と、軸受、ピストン、リング、シリンダーの点検・修理方法が記載されています。修理手順の存在自体は、これらの部品に特有の高い故障率がある証拠ではありません。

一部の602.91では、鉛系コーティングのピストンスカートから黒鉛処理品へ変更されました。Mercedes資料01/22bは改良ピストンを601 030 22 17とし、適合する旧型エンジンへの使用を認めています。部品識別には重要ですが、旧型ピストンすべてに欠陥があったことを意味しません。

Mercedesは2.5Lの自然吸気仕様とターボ仕様の一部で、ピストン冷却用オイルジェットの構成を区別しています。オーバーホール時にはジェットの配置と噴射方向を実際の型式に合わせる必要があります。602.96用部品を602.91や後期DE29LAへ無条件に転用できません。

シリンダーヘッドと動弁系

1本の上置きカムシャフトが10個のバルブを作動させます。MBNA整備書に記載された2.5L仕様では油圧式バルブクリアランス調整を採用しているため、定期的な機械式クリアランス調整は通常の整備項目ではありません。

1987年9月、Mercedesは短距離走行後の異音を抑える目的で油圧式タペットに0.2mmの通気穴を追加しました。1990年1月には内部寸法と油室を変更し、始動時にオイルが早く満たされるようにしています。これらは部品判別や始動直後の打音診断に役立ちますが、旧仕様の故障率を示すものではありません。

タイミングチェーンとオイルポンプ駆動

カムシャフトはローラーチェーン駆動で、190 D 2.5 Turbo、290 GD、E 290 Turbodieselについては2列チェーンが工場資料で確認できます。資料のある2.5Lではオイルポンプは別のチェーンで駆動します。一方のチェーンのメーカー変更を、他方の変更と取り違えてはいけません。

正しいバルブタイミングにはクランクシャフト、カムシャフト、噴射ポンプ駆動部の位置関係が必要です。スプロケット、チェーン接続部、噴射時期調整部品を作業した後は、対象型式の手順でタイミングを確認します。

予燃焼室式と後期Bosch直接噴射

項目 予燃焼室式D25/D29 直接噴射式DE29LA
燃焼方式 予燃焼室による間接噴射 直接噴射
燃料噴射ポンプ 5エレメント列型ポンプ 電子制御式Bosch分配型ポンプ
制御 機械式調速、一部ターボはEDSを追加 ディーゼル電子制御
過給方式 型式末尾により自然吸気/ターボ 確認済み仕様ではターボとインタークーラー
例 602.911, 602.912, 602.942, 602.962 602.980, 602.982, 602.983

290 GD搭載の自然吸気602.942は予燃焼室式、圧縮比22.0:1です。E 290 Turbodieselの602.982は19.5:1で、Bosch直接噴射、ターボ、インタークーラーを備えます。同じ2.9Lでも噴射系部品や診断方法は共通ではありません。

米国仕様602.962は予燃焼室と列型ポンプを保ちながら、EDSによりアイドル、EGR、過給圧関連を制御します。Mercedesの1992年モデル導入資料には予燃焼室容積、噴射ポンプカム形状、負圧配管、EDS機器の変更が記載されています。これは該当仕様の変更で、直接噴射のBosch分配型システムへの移行ではありません。

潤滑・冷却・排気ガス対策

資料にある2.5Lにはギヤ式オイルポンプ、オイルフィルター、ウォーターポンプ、サーモスタットが備わります。オイルクーラー、オイルパン、ピストン冷却、液量は搭載車ごとに異なります。602.962のEDSはEGRと過給関連を制御し、後期E 290には独自のBosch電子制御とメーカー指定の酸化触媒があります。排気装置や故障コードを全OM602で共通としてはいけません。

タイミングチェーンの伸び:対象W124限定の資料

1995年11月のMercedes整備情報05/93は、特定のOM602/OM606搭載W124とOM603搭載W140で、タイミングチェーンの伸びによるエンジン不調を扱っています。対象は1992年7月~1994年4月のうち、資料に示された車台番号範囲に限定されます。

W124車台番号末尾 開始 終了
B B810470 B999999
C C000001 C142875
J J001335 J049633
F F231885 F293159

記載症状はチェーン付近の異音、不安定な回転、始動困難、出力低下、オイル消費増加です。これらだけでチェーン伸びと断定できません。Mercedesはカムシャフトの合わせマークを揃え、対応するクランク角を読み取って基本タイミングを確認するよう指示しています。

Mercedes診断基準

Mercedes整備情報05/93の位相差基準

クランク角のずれ3~10°
チェーン交換、通達に従いカムスプロケットの歯を点検
スプロケットの歯の摩耗・破損
手順に従いチェーン、カム側・噴射ポンプ駆動側スプロケットを交換
位相差10°超
内視鏡でピストン頂面のバルブ接触痕を確認し、二次損傷を修理
ガイド上のチェーン痕
溝や接触痕だけではチェーン・ガイド交換の根拠にならない
根拠
メーカー資料で確認

規定の正回転方向にエンジンを2回転させた後、カムスプロケットを点検します。歯の損傷があればチェーン交換だけでは不十分です。位相差が10°を超える場合、作業完了前にバルブとピストンの接触痕の有無を確認します。

この基準は当該整備情報の手順に限られます。OM602全体のチェーン定期交換距離や一般的な許容摩耗値ではありません。また系列全車に対する安全リコールでもありません。

バキュームポンプ損傷とタイミング駆動部への二次被害

1991年2月のMercedes整備情報43/9は、一部の601/602/603に用いられたピストン式バキュームポンプのローラー・ベアリング損傷を扱います。損傷があれば、噴射時期調整装置にあるポンプ駆動カムも点検するよう求めています。ポンプ交換時に相手側の損傷を見落としてはいけません。

一次故障はローラー、ベアリング、またはその駆動部の損傷です。タイミングチェーン周辺への二次被害は起こり得ますが、すべての事例の初期原因ではありません。

未検証の整備事例:2012~2013年のPeachPartsの詳しい投稿では、1992年式300D 2.5 Turboのバキュームポンプのベアリング部品がタイミング駆動部へ入り、チェーン損傷と大掛かりなエンジン修理につながったとされています。分解時の所見はありますが、発生率や平均故障走行距離は示されていません。

機械的に破損したポンプを外した場合、ポンプだけの点検では足りないことがあります。交換前に駆動カム、周辺のタイミング部品、破片による損傷を確認します。修理範囲は実際の損傷により変わります。

ヘッド周辺のオイル漏れと冷却液への混入

ヘッド接合面からの外部オイル漏れ

Mercedes資料01-85101は、オイル戻り通路の密封不足によるヘッドとガスケットの合わせ面からの漏れを扱います。該当仕様には通路周囲を金属でシールする改良ガスケットが導入されました。

これは必ずしも燃焼ガス漏れではありません。ヘッド接合面から出たオイルは周囲へ流れるため、最終的に見える位置が漏れ元とは限りません。ヘッドを外す前に最初の漏出箇所を特定し、近くの別の外部漏れを除外します。

所有者の報告:300D 2.5 Turboの投稿には、ヘッド前面や側面の油汚れ、過去のガスケット作業後の漏れが見られます。ただし各事例がすべて工場資料の同じ原因であるとは確認されていません。

冷却系へのエンジンオイル混入

別の資料01-87101は、対象601/602/603でヘッド鋳物の巣・気孔からオイルが冷却液へ混入する状態を扱います。冷却液の油汚染だけでは、鋳物の気孔なのか別の内部通路なのか判定できません。

Mercedesが記載した鋳造不良を確認した場合、問題のヘッド交換と冷却系の洗浄が必要です。外側の戻り通路ガスケットを交換しても鋳物の気孔は直りません。この2つの状態を全OM602のヘッドやすべての2.9Lに一般化することはできません。

油圧式タペット音とオイルフィルターシール

1991年6月改訂のMercedes情報18/11aは、602/603のオイルフィルター蓋のシャフトにある2つのOリングを点検するよう指示します。硬化・損傷すると、停止後にフィルター内のオイルがオイルパンへ戻り、次回始動時の供給に影響する可能性があります。

特に温間始動を含む始動中・直後の異音に関係します。Mercedesは油圧式タペットを交換する前にOリングを確認し、片方が傷んでいれば両方交換するよう求めています。始動直後のごく短いタペット音は正常な場合もあると説明しています。

対象部品の番号は015 997 94 48です。実車のフィルターハウジング型式との適合確認が必要です。

診断の順番が重要です。タペットのような異音だけでタペット故障と判断せず、先にフィルター側のオイル保持を確認します。長く続く音や悪化する音は引き続き点検対象です。

燃料噴射系の漏れ:3つの異なる経路

列型ポンプのデリバリーバルブシール

300D 2.5 Turboの所有者から、列型ポンプのデリバリーバルブホルダー周辺の燃料漏れが報告されています。ある事例ではシールと銅ワッシャー交換後、約500マイルで再び漏れました。再発原因は独立して確認されていません。

ホルダー周辺が濡れているだけでポンプの加圧要素が壊れた、あるいはポンプ全体の交換が必要とはいえません。正確な漏れ位置、使用部品、以前の作業結果を確認する必要があります。

高圧噴射管と振動

1989年1月のMercedes情報07.1-89011は、対象601/602/603の1~4番気筒の高圧噴射管が振動で漏れる事例を扱います。二重コーン接続の噴射管と樹脂製固定クリップの正しい取り付けを指定しています。

したがって噴射ポンプやインジェクター付近の燃料漏れは、ポンプ内部ではなく高圧管や継ぎ手が原因の場合があります。正しいクリップや配管経路を使用しなければ振動問題が残ります。部品番号は対象車で確認し、資料が示していない発生率を推定してはいけません。

DE29LAのBosch分配型ポンプシール

602.980、602.982などDE29LAに装着されるBosch分配型噴射ポンプは、予燃焼室式の列型ポンプとは異なります。シール作業では、再組付け後の調整や電子制御機能が重要になる部位に触れる場合があります。

所有者の報告:1998年式E 290 Turbodieselでは、分配型ポンプのシール交換後に始動できてもアクセルに正常に反応しなくなった事例があります。別のG 290 TDでは223,000kmで寒冷時の燃料漏れが報告されましたが、故障部品と修理結果は確定していません。Boschポンプ全体の欠陥や故障距離の根拠にはなりません。

外部漏れ、電子制御異常、整備後の調整不良、内部供給不良を区別して診断します。列型ポンプのデリバリーバルブ修理手順を分配型ポンプへ流用してはいけません。

ターボ・EGR・EDSの診断

米国向け602.962は予燃焼室式ですが、アイドル、EGR、過給関連を電子制御します。出力低下がターボ本体の機械的損傷とは限りません。吸入空気量、圧力、負圧配管、アクチュエーターは別々の診断領域です。

Mercedesは年式によりEDS機器と負圧回路を変更しました。初期602.962ではY31/2とY31/3が吸気圧制御フラップとウエストゲートに対応し、確認された米国向け1992年式では複合変換器Y31/5と関連切替弁を使います。故障コードを解釈する前に正しい年式の配線図と負圧図を選びます。

1992年米国仕様300 D 2.5 TurboのEDSパルスコード

以下の表はMercedesの1992年モデル導入資料に基づく602.962の診断方式です。パルスカウンターはX11/4の4番端子に接続します。コードは点検すべき部品・回路を示すもので、機械的な根本原因の確定ではありません。

コード 1992年米国仕様602.962の診断対象
1 故障記録なし
2 燃料ラック位置センサーL7
3 吸入空気量センサーB2/1
4 EDS制御ユニットN39/大気圧センサー
5 EGR負圧変換器Y31/1またはEGR制御回路
6 EDS内部電源
7 スターターリングギヤ回転数センサーL3
8 冷却液温度センサーB11/4
9 吸気温度センサーB2/1a
10 電源電圧
11 ELRアイドル作動器またはEGR変換器Y31/1、記載された短絡状態
12 未使用
13 EDSユニットN39の内部メモリー
14 EDS圧力センサーB5/1
15 過給圧・圧力制御フラップ複合負圧変換器Y31/5または関連回路

この1992年式のコード11を過給カット弁の故障と即断してはいけません。資料ではELR作動器またはEGR変換器回路に対応します。コード15は1992年式Y31/5を指し、Y31/2とY31/3は旧仕様です。古い表にはコード10の定義が異なるものもあり、混用すると誤診につながります。

Mercedesの旧診断資料は一部EGR関連コードの読み出し条件にも触れています。コード取得後は対象部品と回路の点検が必要です。記憶コードがない出力低下でも、必要に応じてアイドル、EGR、過給制御の作動確認を行います。

直接噴射式602.980、602.982、602.983の電子制御は異なるため、このコード表を使用できません。ターボ入口や過給管内のオイルだけで、ターボ軸受、シール、ピストンリングの故障と断定することもできません。

製造途中の改良と修理部品の互換性

Mercedesは2.5Lの製造中に動作特性、ボルト強度、交換部品の適合、製造仕様などを変更しました。部品改良があっても旧部品が高頻度で故障したことを意味しません。

系統 変更内容 記録された時期・適用範囲 修理上の意味
油圧式タペット 約0.2mmの通気穴 1987年9月 短距離走行時のタペット音
油圧式タペット 内部形状と油室の改良 1990年1月 始動後のオイル充填改善
カムスプロケット固定ボルト M10からM11の伸び管理ボルトへ 1988年11月、該当エンジン 部品と締付け手順
オイルポンプ駆動チェーン オープンスリーブ構造のチェーン 1988年6月、記録された602/603 摩耗低減を意図した改良
カムシャフト用タイミングチェーン クリアランス拡大スリーブ付きIwisチェーン 1989年2月、エンジン番号による制限 部品識別
カムシャフト用タイミングチェーン Daidoチェーンの再採用 1989年9月、該当生産分 タイミングチェーンのメーカー変更でありオイルポンプ用ではない
ヘッドガスケット オイル戻り通路のシール改良 1987年4月、対象仕様 外部オイル漏れに関係
ヘッドボルト 強度向上 602.96は1990年5月、602.91は1991年6月から 交換ボルトと締付け規定
ピストンスカート 鉛系被膜から黒鉛処理へ 602.91、切替エンジン番号は未確認 交換用ピストンの識別
予燃焼室/噴射ポンプ 予燃焼室容量増加とポンプカム変更 米国仕様602.962、1992年モデル 2.9 DE29LAへ適用しない

01/22bはターボ602.96と後期自然吸気602.91の強化ヘッドボルトを記載します。ターボ用新仕様には旧85/850に代わり95/950の刻印と識別リブがあります。対象602.96でヘッドを外す際、Mercedesは旧ボルトを改良品へ替えるよう指示します。再使用可能なボルトでも最大長と規定の締付け手順を守る必要があります。

整備書05-320は1989年のIwisとDaidoによるカムシャフト用タイミングチェーンの変更を区別しています。オイルポンプチェーンのメーカー変更を意味する資料ではありません。部品発注時にはエンジン番号の切替点を確認します。

整備・油脂類・機械的点検

オイル交換と充填量

1991年10月のMBNA資料00/44では、米国向け300 D 2.5 Turbo(124.128)の潤滑系整備間隔は5,000マイル(約8,000km)のままです。同資料にある7,500マイルは別車種300 SD(140.134)の値で、124.128へ適用できません。

適用車種 整備項目 公表値
米国仕様300 D 2.5 Turbo(124.128) 潤滑系整備 5,000マイル/約8,000km(MBNA 00/44)
1990年米国仕様300 D 2.5 Turbo取扱説明書 フィルター交換時オイル量 同説明書では約7.5L、後続改訂を確認
290 GD(461.337/602.942) フィルター交換時オイル量 7.0 L
290 GD(461.337/602.942) ヒーターを含む冷却液量 7.35 L

Mercedesの後続資料には、特定の搭載車でオイル注入量を0.5L減らす指示があります。無関係な旧容量から一律0.5Lを引いてはいけません。オイルパン、クーラー、フィルター構成、年式ごとの変更を実車と照合します。

米国向け124.128の冷却液容量は、1990年取扱説明書では約9.5L、エンジン整備書の表では9.0Lです。版や計測条件の差が完全には解決されておらず、どちらもOM602全体の容量として記載できません。

指定エンジンオイル、粘度、冷却液規格、燃料フィルター交換間隔、厳しい使用条件の整備基準は車両と市場別の資料から選びます。OM602全仕様に共通する単一の液量やサービス間隔は確認できません。

チェーンとバルブの整備

OM602の動弁系はタイミングチェーン式で、定期交換ベルト式ではありません。全系列に共通する交換走行距離は確認できません。05/93対象車はその手順に沿って位相を測定し、必要なチェーンや歯車の修理を行います。他仕様には別の規定が必要です。

対象2.5Lの油圧式タペットには通常の機械式クリアランス調整が不要です。始動後に異音が続く場合、タペット交換前にフィルターのOリングも確認します。MBNA整備書では圧縮測定時の温度を約80℃とし、対象602.91/96の正常値26~32bar、最小約18bar、気筒間差最大3barを示します。後期2.9Lへ自動適用できない値です。

症状と誤診しやすい点

症状 区別すべき系統 次の確認事項
チェーン付近の異音 カムチェーン、ポンプ駆動、周辺部品 位相とバキュームポンプ駆動部を点検
始動直後のタペット音 油圧タペット、フィルターからのオイル戻り 継続時間、フィルターOリング、タペットの点検
冷間始動困難 グロー系、燃料供給、噴射、圧縮 エンジン内部損傷と断定する前に系統を点検
回転不安定・出力低下 タイミング、燃料、EGR、EDS/過給制御 症状に応じて位相や対象仕様の電子制御を確認
ヘッド接合面のオイル ヘッドガスケット戻り通路・周辺漏れ 最初の漏出箇所を特定
冷却液へのオイル混入 ヘッドの気孔・別の内部通路 修理前に実際の混入経路を確定
噴射装置周辺の燃料漏れ 列型ポンプのシール、分配型本体、高圧管 ポンプ形式と漏出部品を特定
ターボ仕様の出力不足 圧力・空気量センサー、負圧変換器、EGR、ターボ 対象EDS/EDC手順で診断し、ターボと決めつけない
キーOFFでも停止しない 負圧式停止機構と関連制御 噴射ポンプ故障と断定する前に停止回路を点検

所有者からの追加報告:W201の所有者は冷間始動困難と不安定な回転を報告し、別の250 D所有者はキーをオフにしてもエンジンが止まらないと述べています。どちらもOM602全体の共通故障は確認されていません。症状ごとに調べる系統が異なり、噴射ポンプ故障とは限りません。

1992年式300D 2.5 Turboの単独報告では、走行約302,000マイル時に3,000マイルあたり米国1クォートのオイル消費が示されました。メーカーの許容消費量ではなく、機械点検なしにリング摩耗、ターボ状態、平均寿命を判断することはできません。

メーカー技術通達とリコールの区別

文書 件名 技術上の要点
01-85101 ヘッドガスケット接合面の漏れ オイル戻り通路のシール改良
01-87101 冷却系へのオイル混入 確認されたヘッド鋳物の気孔
07.1-89011 振動による噴射管の漏れ 1~4番気筒の二重コーン噴射管と固定クリップ
43/9 ピストン式バキュームポンプ修理 ローラー・ベアリング損傷後に駆動カムを点検
18/11a オイルフィルター蓋シャフトのOリング タペット交換前にオイルの戻りを点検
00/44 潤滑系整備間隔 124.128は5,000マイル、140.134とは異なる
01/22b ヘッドボルトとピストン 強化ボルト、締付け、ピストン被膜
05/93 限定生産車のチェーン伸び 位相差、歯車点検、バルブ接触の可能性
58/92 チェーン接続リンクと工具 正しい組付け手順

ここに挙げた文書は整備情報であり、必ずしも安全リコールではありません。資料からOM602系列全体のリコール、共通の保証延長、欠陥率は確認できません。対象車のリコールは市場ごとにVINで確認し、一国の検索結果だけから全世界での不存在を断定してはいけません。

OM602搭載車の購入前点検

  • エンジン型式を確認する。602.xxxの完全な型式と市場仕様を特定してから諸元を参照し、部品を選定します。
  • 冷間始動を観察する。始動に要する時間、回転の不安定さ、異音を記録し、症状だけで原因を断定しません。
  • タイミング系の整備履歴を調べる。W124では整備情報05/93の製造時期と車台番号の適用範囲を確認します。
  • バキュームポンプの修理履歴を確認する。駆動部に損傷があれば、関連するタイミング駆動部品も点検します。
  • オイル漏れの発生箇所を特定する。ヘッド接合面やポンプ周辺の最初の漏出点を確認し、付着先だけで判断しません。
  • 冷却系を確認する。冷却液へのオイル混入や原因不明の減少を調べてから、ヘッドやガスケットの修理を判断します。
  • 燃料漏れの箇所を区別する。列型ポンプのデリバリーバルブホルダー、高圧噴射管、分配型ポンプのシールを分けて確認します。
  • ターボ仕様の加速状態を確認する。制御系の異常と、確認されたターボの機械的損傷を区別します。
  • 適切な電子診断方式を使う。米国仕様602.962のEDSコードを後期DE29LAのBosch EDCへ流用しません。
  • 過去の修理と油脂類を確認する。改良部品、作業手順、車両別のオイルと冷却液の仕様を照合します。

OM602の実際の信頼性評価

OM602には排気量、噴射装置、制御方式、整備要件の異なるエンジンが含まれます。2.5L予燃焼室式、米国向けEDS付き300 D 2.5 Turbo、自然吸気290 GD、直接噴射DE29LAを同じエンジンとして診断してはいけません。

Mercedes資料が裏付けるのは、限定W124のチェーン点検、ローラー・ベアリング損傷後のバキュームポンプ駆動部点検、ヘッド接合面のオイル漏れ診断、冷却液中オイルの原因調査、タペット交換前のフィルターOリング点検などです。原因と修理上の意味が明確なこれらの情報は、一般的な故障リストより実用的です。

所有者や整備担当者の事例には燃料漏れ、冷間始動不良、オイル消費、二次損傷が含まれます。個々の車両で起こり得ることは示しますが、代表的な故障統計ではありません。これらから一律の故障走行距離やOM602の平均寿命を算出することはできません。

技術資料と出典

所有者・整備事例の出典

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